目は口ほどに物を言うとはこのことか。新聞記者になりたいという大学生が面接にやって来た。瞳はキラキラと輝き、どんな人物か見定めようとあれやこれや質問を考えていた自分が恥ずかしくなった。質問する心積もりだったが、ほとんど質問に答える側に回らされた。純粋に記者になりたい、化学が世界を救うかもしれないという思いが目に宿り、こちらの鎧を取り払ってしまった▼帰宅しニュースを見ていると、競泳の池江璃花子選手が白血病から数百日ぶりに練習を再開したと報じていた。過酷な闘病で体力と筋力を失い、東京五輪の夢は絶たれたものの、2024年のパリ五輪を目指すという。その二十歳の若者の瞳もキラキラと輝いている。夢を持つこと、目的に向かって全力を尽くすことの大切さを若者たちに改めて気付かされた▼人生は壁の連続だ。それをどう乗り越えるか、試行錯誤することが人を成長させてくれる。化学企業も数多の壁に直面しながら、それを乗り越えてきた歴史がある。しかし時に経験が邪魔をすることもある。このやり方でうまくいくはずがないといった思い込みが前進を思いとどまらせる▼「やってみなはれ」。サントリーの創業者である鳥井信治郎の名言だ。「やらな分からしまへんで」。よし、週末はドライバーを思いきり振ろう。(20・7・6)

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