アイロムグループは11日、子会社のIDファーマが開発している新型コロナウイルスワクチンについて、経鼻投与型の製剤で開発を進める方針を明らかにした。ウイルスの主な侵入経路である鼻咽頭で感染を防御するため、感染自体の予防効果に加え、さまざまな変異株にも対応できると期待している。投与デバイスも提携先と協議中。今秋にも最初の臨床試験を開始する予定。

 複数のワクチン抗原や投与方法を検討した結果、非臨床試験でとくに高い免疫原性を確認したウイルス抗原を選び、経鼻投与による接種方法で開発することを決めた。経鼻投与するデバイス(医療機器)の検討も進めており、特定のデバイスメーカーと協議中という。毒性試験なども行った後、最短で10月にも最初の臨床試験を始める予定。国内外の感染動向をふまえ、海外で臨床試験を始める可能性もあるという。同社はこれまで5月までに臨床試験を始める計画だったが、抗原と投与方法を変更したため開始時期が後ろ倒しになる。

 経鼻投与ワクチンの強みは、ウイルスの侵入口である鼻咽頭で感染を防御できること。投与すると鼻などの粘膜組織に存在する免疫物質(IgA抗体)を増やす。鼻でウイルスの体内侵入を阻止するため、感染自体の予防や変異株に対する効果、無症状感染者のウイルス排出の低減なども期待できるという。注射型ワクチンと同様に体内の主な免疫物質であるIgG抗体も増やすため、ウイルスの細胞侵入を阻止する効果もある。

 同社が開発するコロナワクチンは、センダイウイルスを「遺伝子の運び屋」にしたウイルスベクターワクチン。実用化に向け、ベクターの大量培養などを行うための製造設備の拡張も進めている。

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