アセトニトリルの需給が一段とタイト化すると懸念されている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によりアクリロニトリル(AN)の需要が低迷しているため、主要ANメーカーの副生が一段と締まる可能性が強まった。需要は医薬品の溶媒向けで好調に推移しているため、一段高になることもあり得そうだ。

 アセトニトリルはANの副生が大半を占め、ほかに酢酸などを用いた合成品がある。ANは今年に入ってから、医療用手袋などに使われるアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)のラテックスなど一部の用途は底堅いが、繊維向けやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂向けの需要が失速。これにより主要ANメーカーの稼働率が低下。合成品も主産地中国の環境規制により操業を抑制されている。

 こうしたなか、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大。各国の入国制限などにより経済活動が停滞し、一時的に自動車生産が停止するなどの動きが出ている。自動車向けABS樹脂などの需要悪化も懸念され、主要ANメーカーの稼働はさらに抑えざるを得なくなるとの観測が出てきた。

 合成法メーカーも、新型肺炎の影響もあって稼働が抑えられ「供給に余裕はみられない」(市場関係者)。需要が医薬品用溶媒向けで好調なこともあり、AN副生が一段と減ることで需給タイト化は不可避になるとみる向きが多い。1キログラム当たり4ドル台で推移している価格は、AN需要が本格的な回復期に入るまで当面は右肩上がりになる可能性が出てきている。

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