新型コロナウイルスの感染拡大によるマスク不足を受け、布マスク市場に参入するアパレル・素材メーカーが相次いでいる。各種機能や洗濯が可能な利点はもちろん、ファッション性も加味した商品展開は、消費者からも高い評価を得ているようすだ。なかでも繊維メーカーは、優れた着用感や抗菌、接触冷感などの技術を生かした素材展開で、新市場で存在感を発揮しようとしている。

 布マスクは、使い切りの不織布マスクとは異なり、洗濯後にも繰り返しの使用が可能な素材を使用している。コロナ禍で衣料品の店頭販売数量が激減するなか、布マスクに従来の衣料素材を転用できるとあって、アパレル関連メーカーが相次いで同市場に参入。スポーツアパレルのミズノやヨネックス、日清紡傘下でシャツ製造の東京シャツ、紳士服大手のAOKI(アオキ)や青山商事などは、短期間で商品開発を行い、早期の市場投入にこぎつけた。なかにはオンライン販売で即日完売になるなど、布マスクがかつてないほどの人気アイテムとなっている。

 布マスクに高い注目が集まるなか、ユニクロも同市場への参入を決めた。夏用の肌着素材「エアリズム」を使用した3層構造のマスクを19日に発売した。当面の間、毎週50万パック(1パック=3枚組)を継続的に生産するとしている。

 同マスクは、高性能フィルターを表側のメッシュ素材と内側のエアリズムで挟み込んだ構造。BFE(細菌ろ過率)99%カットの性能を持つほか、紫外線を90%カットする効果を付与している。

 このマスクに原糸を供給しているのが東レだ。どの部分に東レの原糸が使用されているかは非公表とするものの、現在もユニクロと共同で「快適性や性能がより優れたマスクの開発を検討している」(東レ)という。引き続き、「防御性能」「洗濯可能」「つけ心地」を追求したマスク開発を継続する考えを示している。

 また、銀メッキ繊維を使用した着衣型ウエアラブル製品で高い注目を集めるミツフジは、100回の洗濯耐久性を誇る夏用マスクを開発。福島県川俣町の自社工場で月10万枚の生産体制を整えた。

 新商品は、銀メッキ繊維配合の専用糸「AG fit AQUA」を本体の布地に使用した単層マスク。銀メッキ繊維による抗菌防臭効果を付与したほか、特殊糸加工と設計により、ファンデーションが付着しても目立ちにくい色と構造を採用した。優れた経済性と機能を売りに、法人向けなどとしても広く訴求していく。

 そのほか小松マテーレは、快適な「マスク内環境」を実現したマスクを開発した。従来品に比べ接触冷感を1・5倍超に高めたことで、夏場での着用に適したマスクに仕上げた。また、植物染料の成分を配合した独自の染色技術により、優れた抗菌防臭効果も発現させている。

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