日本で近代化学工業が勃興したのは明治の頃であり、創業して100年以上の歴史を持つ化学企業は数多く存在する。そうした企業の事業内容は、歴史とともに大きく変遷してきた。したがって、歴史ある社名も現在の姿と合致しなくなったと考える経営者も少なくない▼出過ぎたことと承知しているが、社名変更を検討する企業の経営者に、アルファベットを使わないで、と言ってしまう。ブランド確立に時間がかかることがひとつ。もう一つは化学を日本語で報道する情報媒体として、直面する問題があるからだ▼ABCという会社があったとする。そのABC社がESG経営強化のため、ABS樹脂製造時のGHG排出量を減らす、という記事の見出しはどうなるのか。「ABC、ESG経営を強化/ABSのGHG削減」。読みたくなるだろうか▼カタカナ語にも悩まされる。カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーションなど、外国語をカタカナにすると長すぎて困る。これを短縮してCN、DXとすると、前出のアルファベット羅列問題になってしまう▼157年の歴史を持つBASF。「バーデン地方のアニリンとソーダの製造会社」という創業時の社名をそのまま使っている。他のアルファベットに埋没しないブランドの存在感。参考にすべきではないか。(21・6・15)

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