イソプロピルアルコール(IPA)の海外市況が急騰している。アジア価格の指標となる東南アジアCFRは1トン当たり1400ドル前後。酢酸エチルやメチルエチルケトンなどの汎用溶剤が下落する一方、3月から右肩上がりで推移している。背景には新型コロナウイルスの感染拡大にともなう消毒用の需要増がある。フル稼働で対応しているが、旺盛な需要に追いつかない状況。欧米市況も高騰し、世界的に玉不足に見舞われている。

 IPAのアジア価格は中国経済の鈍化などが重石となって3月中旬に830ドルまで軟化していたが、コロナウイルスが蔓延するにつれて需要が急速に拡大し、同月下旬から反転上昇した。足元は1400ドル前後に達し、いぜん騰勢は止んでいない。

 3月以降、手消毒需要が活発化している。以前から同用途の需要が旺盛だったフィリピンに加えて、フィリピン以外の東南アジア、インド、欧米でも引き合いが殺到しているようだ。

 一方、生産は需要に追いつけない状況にある。中国では、1月から複数の主要アセトン法メーカーが原料アセトンとの値差縮小で稼働を停止していた。急速な需要増を受けて3月からフル稼働一色だが、未だ輸入ポジションの東南アジアには玉が行き渡っていないとみられる。

 国内では輸出ポジションのJXTGエネルギーが2~4月に定修のため、輸出玉が絞られている。欧州では主要3社のうち、設備不調でフル稼働でない供給元があるようで、欧州玉に頼るインドでは玉不足に見舞われているもよう。

 コロナウイルスの感染拡大が収束するまで値崩れはないとの見方が支配的。市場関係者によると「通常、アジアから調達する場合、船の手配さえ上手くいけば2~3週間前でも次月分を購入できたが、コロナウイルスの影響で、すでに5月分のオーダーがすべて埋まっている。これから5月分の生産を行うような状況で、足元では6月分の商談が行われている」と玉を争奪する事態となっている。

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