愛好家には聖地というものがある。本来の意味である宗教の聖地は別にして、比喩的な意味での聖地はアニメの聖地、映画の聖地、文学作品の聖地など様々あり、そこをめぐる聖地巡礼というのも人気がある▼先月のことだが、愛用している元素手帳にその月の予定を書き込んでいたら、元素の豆知識欄に「イッテルビー村」(YTTERBY)が紹介されていた。声に出してみるとなかなか面白い音韻だ。そして、ここにはなにかが隠れているぞと思わせる文字のつらなりなのだった▼説明を読み進めると、やっぱりだ。スウェーデン諸島ヴァクスホルムにあるこの村で1792年に採掘された鉱石「ガドリン石」から、イットリウム、テルビウム、エルビウム、イッテルビウムの4元素が単離され、村名がそれら元素名の由来となったのだ▼それだけでなく、実はこの鉱石からはその4元素以外にガドリニウム、ツリウム、スカンジウム、ホルミウム、ジスプロシウム、ルテチウムも見つかった。レアアース(希土類)17種類中の10種類というのはすごいと言うしかない▼もうこれは元素マニアの聖地と言っていいだろう。日本から巡礼するにはかなり遠いけれども、いつかは訪れてみたいと思っている人はいるだろう。もしかするとそれは、想像以上にたくさんの人かもしれない。(20・11・4)

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