カーナビに目的地をセットしたら、通い慣れた道が選ばれず「なんだこりゃ」という経験をしたことがある人は多いだろう。通い慣れた目的地ならカーナビは必要ないとも言えるが、なぜこんなルートを推奨してくるのかという疑問をずっともっていた▼コンピューターがさまざまなデータから推論して出している結論なのだろう。それが必ずしも実生活上の「正解」とは一致しないというひとつの例である▼米グーグルが、環境を意識した利用者向けにグーグルマップの新しい検索機能を発表した。AIを使い、混雑状況などから最もCO2排出量が少ないルートを教えてくれるという▼最短距離の途上に発生中の渋滞を避けてスムーズに走行することを優先してルートをはじき出すのだと思われるが、遠回りしたらその分、燃料を余計に消費するのではないかという疑問ももたげる。遠回りしても目的地に早く着けばCO2排出は減る、ということだろうか。計算とデータのプロが考え出したプログラムだとはいえ、素人にはなかなか腑に落ちないところがある▼ノーベル物理学賞を受賞した眞鍋淑郎さんは、自然は無限に複雑だからいかに単純化し本質をつかまえるかが大事だと語っている。ルート選択といった瑣末なことではあるが、豊富な経験を下敷きにした直観も大切なはずだ。(21・10・13)

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