人の話に惹きつけられるのはどういう理由によるだろう。内容が面白いのはもちろん、発語の音調やリズム感のよろしさ、そして相手を見つめるまなざしに宿る光のようなもの。さらに付け加えるならば、悲観的でなく希望や夢が随処に織り込まれていることだろうか▼まさにそういう話を聞いてきた。神戸大学の木村建次郎教授。木村教授は院生時代から、波動の散乱から物体内部をみる方法論に興味を持ち、応用数学の未解決問題であった「散乱の逆問題」に挑戦し、10年がかりで世界で初めて数学的な計算方法を発明した▼大学発ベンチャーのIGS社を2012年に立ち上げた。リアルタイムでコンクリート内部を検査する機器やリチウムイオン電池の短絡箇所を映像化する電流経路映像化装置を実用化。また、正確で痛みのない乳がん検査をを可能とするマイクロ波マンモグラフィーを開発、21年の販売開始を目指している▼小さい頃、エジソンやアインシュタインに憧れ、この偉人たちの本を死ぬほど読んだという。ビル・ゲイツなどのアメリカンドリームにも憧れたという。とくにエジソンについては”かっこよすぎますよね”と目を輝かせる▼磁気を使って銃器や刃物を透視するセキュリティチェック装置なども開発している。応用範囲はまだまだ広がっていきそうである。(20・3・4)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る