コーヒーにミルクをたらしただけでは均一に混ざることはない。氷を常温下で放置すれば溶けてしまい、元の形へ自然と戻ることはない。宇宙の森羅万象は、無秩序が増大する「エントロピーの法則」が取り巻いている。当たり前のように思えるが、この法則に立ち向かっているのがわれわれ生物である▼生物は身体を秩序ある状態に維持しようとしている点で、エントロピーの法則が支配する宇宙の原理に抗っている。人類は無秩序であったところに秩序をもたらそうと文明を発達させてきた。しかし宇宙にもエントロピーの法則に反するような現象は存在する。その典型例が、太陽から近すぎず遠すぎず適度の環境が形成され、多様な元素と適度な化学反応があり、豊富な水がある地球である▼あらゆる条件が丁度良くなければ、地球は存在しなかったであろう。まさに奇跡の星だ。丁度良い条件が選択されるのを「ゴルディロックスの原理」というらしい。ゴルディロックス条件を満たすことができれば、エントロピーの法則を打ち破れるのではないか▼奇跡の星で人類は際限なく欲望を追求し、無秩序が広がっている。このままではエントロピーが増大し地球も人類も死を免れない。地球や人類が誕生したこと自体が宇宙の無秩序への過程に過ぎない-。そうでないよう願いたいが。(21・9・6)

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