東京大学医科学研究所(東大医科研)の河岡義裕特任教授らの研究グループは、マウスやハムスターを使い、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の病原性が従来株より低いとする結果をまとめた。肺での増殖能の低さに加え、感染させた動物では体重減少と呼吸器症状の悪化がみられなかった。研究グループは今後の対策を講じるうえで重要な手がかりになるとしている。

 患者から分離したオミクロン株をマウスとハムスターの鼻腔内に接種、感染させ、増殖能と病原性をこれまでの流行株と比較した。その結果、マウスの肺や鼻でのオミクロン株の増殖能はベータ株と比べ、大幅に低下していることが分かった。さらに気道の状態を測定すると感染していないマウスと同程度で、呼吸器症状での悪化も認められなかった。

 一方、ハムスターを使い、同様の解析を行ったところ、デルタ株では生じた体重減少と呼吸器症状悪化はなかった。鼻ではよく増えたものの、肺での増殖能はデルタ株に比べ、顕著に低いことも突き止めた。

 コンピューター断層撮影装置(CT)で肺を観察しても、オミクロン株に感染したハムスターは軽度の炎症にとどまり、デルタ株のような肺炎像はなかった。細胞表面にヒトと同じウイルス受容体を持たせたハムスターでも同様の傾向だった。

 ただ、今回の結果に関して研究グループは動物モデルでの成績だとし、「そのままヒトに当てはまるかどうかは不明」としている。また、重症化しやすい高齢者らを対象とした検証を今後の課題として挙げた。

 国立感染症研究所(感染研)、米ウィスコンシン大学、国立国際医療研究センターなどとの共同研究成果。詳細は米科学誌「ネイチャー」オンライン速報版に掲載された。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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