何事も良い結果を残すというのは大変なことだ。運に恵まれ労せず良い結果が出る場合もあるが、往々にして如何ともしがたい悪条件が重なったりする。ましてや多くの人々に厳しい視線を向けられ、コロナ禍という逆風下で4年に1度の世界イベントを遂行するなどというのは至難の業だ▼8年前にオリンピックの開催地が東京に決まった際、日本中が歓喜に沸いた。しかし、開催は1年延期となり、いざ開催するとなると、入国する選手や関係者から感染者が相次ぎ、ほとんどの会場が無観客での開催となった。国内から「開催する意義はあるのか」と批判が相次ぎ、海外からも「おもてなしの心はどうした」などと揶揄されている▼オリンピックの精神は、平和でより良い世界の実現にある。スポーツは勝負事であり、勝者がいれば敗者がいるのは当然だ。しかしお互いを讃え合い、勝者も敗者も観戦する人々も、世界が心を一つにすることこそが開催の意義であろう▼選手たちは良い結果を残そうと、1年延期という前例のない現実と向き合いながら厳しい練習を続けてきたことであろう。真夏の炎天下、全力で勝負に挑む選手たちを応援しよう。そして開催国として後に「日本だからこそ未曾有の苦難を乗り越え開催できた」と振り返ってもらえる大会にしようではないか。(21・7・26)

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