秋の気配を感じる日が多くなり、この季節ならではの美味しい食べ物にありつける機会も増える。秋の魚といえばサケやサンマが代表選手だが、今年は不漁が続いている。食卓に久々にサンマが登場したが、か細く残念な姿だった▼サンマより一足早く秋を告げる魚がカマス。秋は脂が乗り、新鮮なものは刺身が格別らしいが、尖った牙で小魚を捕食する獰猛な魚だ。この習性を利用した有名な実験がある▼水槽をガラスの仕切り板で2つに分け、一方にカマス、一方に小魚を入れる。カマスは小魚に突進するが、仕切り板で跳ね返される。しばらく突進し捕食できないと分かると、仕切り板を外し目の前に小魚が泳いでいても捕食しなくなる。そこへ投入した別のカマスが小魚を捕食する姿を見て、本能が目覚める▼仕切り板があるという先入観が「どうせダメだ」という無気力感を生み、仕切り板が外された変化にも気づかず挑戦しなくなる。既存のムードにとらわれず、本来やるべきことは何かなど目覚めさせてくれるのが、先入観を持たない異質の人材である▼きょう、どこかの国で新しい首相が選出される。その国民は何カ月も自粛生活が続き、無気力になっているようだ。新首相は国民の無気力を取り払い、水槽の中を活性化させる新しいカマスなのか注目されている。(21・10・4)

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