欧米製薬大手による新型コロナウイルスワクチンの開発計画が明らかになってきた。ベンチャー企業から遺伝子ワクチンを導入した米ファイザーを除き、ワクチン大手各社は既存の技術基盤を応用して開発を進めている。米メルクは、1回接種や経口投与など利便性が高いワクチン2つを開発し、今秋から臨床試験を始める。来月治験入りする仏サノフィと英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、米政府から20億ドル超(約2200億円)の支援を獲得。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が、9月にも日本で臨床試験を始めることも分かった。

 米メルクは、オーストリアのテーミス・バイオサイエンスを買収して開発する「V591」、非営利団体「国際エイズワクチン推進構想(IAVI)」と開発する「V590」と2つのワクチンを開発。591は麻疹ウイルス、590は水疱性口炎ウイルスをベクターにしたワクチンだ。9月までに591の臨床試験を始め、年内には590の試験も開始する予定。

 先行するファイザーや英アストラゼネカ(AZ)などより遅れて参入したが、メルクが重視するのは確実性と利便性。他のワクチンで実績があるウイルスベクターを使い、1回接種ですむようなワクチンにする。590は経口投与も検討する。

 サノフィ、GSKが共同開発するワクチンも来月から臨床試験入りする予定で、開発・製造支援として約20億ドルを米政府から取得。まず1億接種を米国向けに供給することが条件で、追加的に5億接種提供するオプションもある。欧州では、3億接種の供給に向けて欧州連合(EU)と協議中。両社は来年末までに全世界で10億接種を供給する計画。

 日本向けの開発では、J&Jが9月にも臨床試験を開始する。国内の第1相臨床試験として行われる見込み。症例数や政府との交渉については非開示。

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新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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