日機装がヘルスケア分野に展開する深紫外線LED(発光ダイオード)応用製品が好調だ。1月末に発売した空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」は、宮崎大学との共同実験で新型コロナウイルスへの有効性が確認された直後から問い合わせが急増。納入は2~3カ月待ちで、年内にも年産10万台体制を整備。業務用モデルも投入する。アルコール製剤不足で需要が高まるオゾン水手洗い装置「Handlex(ハンドレックス)」も増産する。

 日機装は、世界トップクラスの性能を持つ深紫外線LEDを開発。現在は台湾プラスチックとの合弁会社でチップ、モジュールを量産し、日機装本体は応用製品に注力している。とくにヘルスケア分野では医療機器メーカーとしての信頼性も強みに、集団感染予防に焦点を当てた製品を開発し、事業拡大を目指している。

 空間除菌装置の多くは空気中に殺菌成分を有する薬剤を散布するアクティブ型で、十分な除菌効果を得るには空間内の薬剤濃度を維持し続ける必要がある。

 これに対し日機装のエアロピュアはパッシブ型を採用。空気を吸い込み2種類の光触媒フィルターで除菌・消臭し、捕捉した菌やウイルスに深紫外線LEDの光を照射し、酸化分解反応によりDNAやRNAを変性させ不活化する。ファンと光触媒フィルターを最適化することで小型・高機能化するとともに、消耗品交換不要でランニングコストも抑えられる。

 宮崎大学との共同実験でエアロピュアに用いる同社の深紫外線LEDがネコ腸コロナウイルスとウシ型結核菌に加え、新型コロナウイルスを不活化できることが分かり、その有効性が確認された。

 これを受け問い合わせや引き合いが殺到、当初想定した病室以外に高齢者や新生児のいる一般家庭で使われるケースも多いという。委託先に増産を要請し月産3000台にめどをつけた。年内にも年産10万台に引き上げる。現在のモデルは約8畳の空間除菌が可能だが、「次は20畳以上の業務用をターゲットに開発」(日機装)を検討中だ。

 ヘルスケア分野への応用第1弾製品であるハンドレックスも順調だ。水道水を電気分解し直接オゾン水を生成し手洗いに用いる。深紫外線LEDの光を照射しオゾン水の紫外線吸収度合いを計測することで安定した濃度で供給できる。病院施設を中心に販売しているが、新型コロナ感染拡大でアルコール製剤が不足するなか引き合いが急増。納入は1カ月待ちで、委託先に増産を要請中。年内には水道直結型の発売も予定する。

 今後はアルコール製剤では殺滅が難しい菌に対応する。すでにノロウイルスや細菌性食中毒菌への効果を確認、食品産業に提案する。頻繁に手洗いするクリーンルームには皮膚ダメージが少ない特徴を訴求する。さらにアルコール製剤の持ち込みが難しい船舶や航空機も視野に入れる。

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