新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続くなか、業務でのロボット導入が加速している。新型コロナウイルス破壊・不活化のエビデンスを持つ紫外線(UV)照射ロボットは引き合いが増加。中国のスタートアップが展開する物流倉庫向けピッキングロボットは人との協調作業で業務全体を効率化し、現場人数を抑え接触機会を低減する。コミュニケーションロボットとサーマルカメラを組み合わせたソリューションを提供する企業は、ロボットの声掛けで検温の協力率が確実に向上したことも検証しており、コロナ禍でロボットの存在感は着実に高まっている。

 銀座農園が販売する紫外線照射ロボット「UVバスター」は、関係会社ファームロイドの農業分野における紫外線によるウイルス・害虫除去技術と、銀座農園の農業ロボット開発技術により実現。リモコンで遠隔操作し、搭載したカメラで周辺の状況を確認しながら床や壁に紫外線を照射。新型コロナウイルスを破壊・不活化する。

 ランプ部分が90度に展開する構造で広範囲に紫外線を照射する。紫外線照射試験により、対新型コロナウイルスの有用性のエビデンスがあるのが強みだ。定価は650万円と他社製ロボットに比べ価格を抑えた。すでに病院やテレビ局などに導入ずみ。ホテルやイベント関連の清掃業者からも引き合いがあり、代理店の販路も活用し「年内数十台の販売を目指す」(銀座農園)。

 シリウスロボティクス(中国・深セン)が提供するAMR(自律走行ロボと)協調型ピッキングロボット「FlexComet」は、物流倉庫での採用が本格的に始まっている。最大荷量50キログラム、連続12時間稼働で、カメラやレーザーレーダーを駆使して障害物を避けながら自律走行する。導入する設備の改造などは不要で、地図作成や地図データとロケーションの紐づけはタブレット端末のアプリで簡単に設定可能。

 物流倉庫ではロボットがピッキングする商品まで最短距離で向かい、商品画像や商品情報をタブレットに表示する。作業員は決められたゾーンを担当し、ロボットが止まった個所でタブレットの指示に従いピッキングする。「完全自動化でない分、導入コストを抑えられる」(シリウスジャパン)。物流サービス・システムを提供する関通の楽天市場向け物流拠点ですでに稼働中。物流倉庫に限らず、「書類や医薬品のピッキングにも活用できる」(同)。

 NTT東日本は2020年末からヒト型コミュニケーションロボット「Sota」を用いたロボット×サーマルカメラ連携ソリューションを提供。感染症予防の検温・マスク着用確認で効果が期待できる。Sotaが人に声を掛け、検温の呼びかけや案内をして人の注意を引きつける。無人店舗のインターネットカフェでの実証実験では、サーマルカメラのみ設置する場合に比べの検温数が倍増したという。

 ロボットは定価14万5000円、サービス利用料は月額数千円から。ターゲットは各種店舗で、病院や介護施設への導入も想定する。人が検温する場合に比べ感染リスクも確実に低くなり、店舗側と利用者双方の安心にもつながる。技術的には顔認証も可能で、「価格を抑えた形でオフィスの入退出管理などの機能付加も検討」(NTT東日本)する。

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