新型コロナウイルスの感染拡大でスマートフォンやパソコンを使うオンライン診療を実施している医師の4割が、収束後の中止を検討していることが、「オンライン診療の健全な推進を図る有志の会」と世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターが実施した調査で分かった。4~6月は医師の半数がオンライン診療を実施したが、調査では診療報酬など現行制度の課題を問う回答が多く寄せられた。

 調査は7月17日から20日にインターネットで実施。対象は医療情報サービス大手のエムスリーが運営する会員制サイトを利用する医師で、有効回答数は5000人だった。

 オンライン診療で疾患の改善やコントロールができた症例は全体の8割。疾患別では高血圧症や便秘症、脂質異常・高コレステロール血症、アレルギー性鼻炎が多かった。

 政府が特例で実施した規制緩和を受け、来院歴がない初診患者にオンライン診療を実施した医師は全体の2割だった。当初、調査グループは慢性疾患が多いと予想していたが、結果的にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、頭痛が目立った。ただ、現状の遠隔診療の92%は電話によるもの。ビデオ通話アプリなどを活用した症例はまだ少数で、本格的なデジタル化に向けた取り組みは始まったばかりといえそうだ。

 一方で課題もある。新型コロナ収束後について「オンライン診療を続けない」が16%、「分からない」が24%と、合わせて4割を占めた。

 こうした課題について第四次産業革命日本センターの藤田卓仙プロジェクト長は「対面診療と同じ評価が得られるようなエビデンス(科学的根拠)を積み上げていく必要がある」と指摘。さらに「オンライン診療で得られたデータの有効活用を進める必要がある」と話した。

 「有志の会」で山下診療所(東京・文京区)の山下巌院長は「導入期間や費用の面で医療機関の負荷を軽減する工夫が必要」と話している。また、従来のエビデンスに加えて、患者の不安に寄り添う「ナラティブ・ベイスド・メディスン(NBM)」の観点からもオンライン診療を評価すべきとする考えを示した。

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