見逃す可能性もあるものの、使いようによっては抗原検出キットは有用-。東京大学医科学研究所(医科研)の河岡義裕教授はコロナ下でも社会経済活動を回していくには同キットが活用できるとの私案を披露した。検体ウイルス量が多い時には確実に陽性と判定することに着目。イベントや会食などに際して迅速抗原検査を行うといった使い方を示した。

 25日に日本医療研究開発機構(AMED)が開いた記者説明会の席上で、「個人的な一つの案」と断ったうえで紹介した。例えば、イベント会場やレストランなどに入る前に検査を実施。陰性者に対してだけ入場・入店を認めることで感染拡大のリスクを減らせるとした。

 足元、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬やワクチンの開発が進むが、抗原検出キットを上手に用いることで「元の生活に戻れるかも知れない」と語った。また、海外では導入検討をしている国・地域があるとも説明した。

 抗原検査キットの場合、検出時間は15分と短いものの、感度が問題といわれている。実際、河岡教授らが日本で承認されたキット3製品を調べたところ、PCR検査で陽性だった78検体中、各キットが陽性とした数は16~30検体とばらつきが出た。ただ、ウイルス量が一定を超えると「陽性と判定する」ことが確認でき、キットの感度向上や低価格化が進んでいることを踏まえ、使い方次第では効果が期待できるとした。

 実際に運用していくうえでの課題としては、(1)個人で検査キットが手に入れられる仕組みの構築(2)陽性だと分かった時の対応-の2つを挙げた。検体の採取位置については「一番良かったのは鼻咽頭」としつつ、結果が「そんなに悪くない」唾液が「現実的だ」と結論づけた。

 このほか、ハムスターで治療薬候補の比較を行った結果、抗ウイルス薬「カレトラ」や抗寄生虫薬「イベルメクチン」などに効果がなかったこと、ヒトモノクロナール抗体による新療法の臨床試験を来年にも開始することなども明らかにした。

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