東レリサーチセンターは7日、新型コロナウイルスの標的たんぱく質を細胞レベルで可視化することに成功したと発表した。独自に開発した標識体収縮抗体と、2次イオン質量分析法(SIMS)の組み合わせで、組織中に残る残血などの影響を受けず局在部位を明らかにした。今後は技術を発展させ、細胞内局所イメージングの確立を目指す。

 新型コロナウイルスが細胞に感染する際に標的として利用するたんぱく質「ACE2」について、肺組織での局在部位を細胞レベルで明らかにすることに成功した。最小50ナノメートルの高空間分解能でイメージング分析などが可能なSIMSと、イオンビームで効率的に2次イオンを放出する標識体の活用で可視化を実現した。

 ACE2の発現分布を確認する従来の方法は、組織中に残る残血の影響やイメージングの分解能が問題で、細胞レベルでの発現分布を明らかにすることは容易でなかった。東レリサーチセンターが今回確立した手法は、残血や他の成分の影響を受けず、高空間分解能で生体中の目的分子を可視化できる。

 同社は、たんぱく質や核酸などが細胞内のどの小器官に移行するかを明らかにする細胞内局所イメージングの確立に向けて測定系の構築を進めている。発症原因究明や薬効発現の科学的根拠の獲得、核酸医薬品の核移行や抗体医薬品のリサイクリング評価を可能にする手法を開発し、創薬研究などに貢献していく。

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