世界各国がコロナ禍に覆われ各企業とも業績面で大きなダメージを受けるなか、専門商社が生き残りをかけてさまざまな施策を打ち出している。取り扱う新型コロナウイルス関連商材としては、抗菌マスクや除菌剤といったコロナ対策に直結するものが多いが、それ以外にもテレワークや巣ごもり需要に対応した商品やサービスなど、間接的に需要が増えているものへのアプローチも少なくない。これらは需要動向が予測しにくいジャンルではあるが、将来大きな市場へと成長する可能性もあることから、今後さまざまなかたちでこのようなコロナに起因する新ビジネスに対するアプローチが活発化しそうだ。

 新型コロナという厄災を背景に、抗菌・除菌への関心がこれまで以上に高まっている。三井化学ファインは今後の事業戦略として新商品の開発を掲げており、そのなかでコロナ後の新たな生活様式にマッチした公衆衛生の維持に寄与する商材の開発を進めていく考えだ。具体的には「FASTAID ウイルス・スウィーパータオル」や水溶性抗菌・防カビ剤の「ヨートルDP-CD」、米トロイ社の抗菌・防カビ剤、抗菌スプレー「AUSIRO」などの各種商材を揃え顧客に提案していく方針。

 このなかでウイルス・スウィーパータオルは、通常1~2週間で分解してしまい機能が失活する次亜塩素酸ナトリウムを安定した状態で圧縮タオルと共にパッケージ化した商品。タオルとセットになっているため必要な時に瞬時に使え、衛生面でも安心なことが特徴となっている。介護施設や公共施設などの業務用として提供していく。

 新光商事は「感染症対策ソリューション」と銘打ち、同社が保有するさまざまな商材やサービスを紹介している。例えば空中ディスプレイの「AIplay」はタッチパネルやボタンに直接触れずに操作できるため、新型コロナウイルスの感染経路とされている券売機やATM、エレベーターなどに採用することによって感染防止に効果を発揮できる。また現場作業員にウエアラブルカメラを装着してクラウド経由で音声・映像をオペレーターと共有できる「遠隔監視ソリューション」も提案している。

 一般家庭で使用するソリューションとして、見守られる側の操作が不要な「見守りシステム」を販売している。高齢者にとってはスマートフォンが操作しにくいケースもあるが、同社が提案するシステムは身近なテレビを利用する。見守る側が通話発信をすると、見守られる側のテレビが自動的に応答してビデオ通話を開始できる。

 超音波振動子を使用しミクロの霧を両手のひら全体にまんべんなく自動的に噴霧する「て・きれいき」は、消毒用アルコールの殺菌抗力が高く薬剤の気化も早いので快適に使用できる。すでにオフィスや工場などの事業所入り口で使用されており、今後はレストラン調理場の入り口などでの手消毒除菌への利用を見込んでいる。

 GSIクレオスは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により発生した、マスクや歯ブラシなど医療・衛生消耗品の新たな需要にきめ細かく対応した。また模型用水性塗料は「巣ごもり需要」の影響と海外市場拡大に向けた取り組みの強化により、2020年第1四半期の業績は増収増益となった。

 マスクでは、使い捨てのプリーツマスクやアンチウイルスマスクを発売した。使い捨てのプリーツマスク「空間ケアマスク」はメルトブロー不織布をフィルターに使用しているため微粒子の捕集性に優れており、耳かけ部分に特殊ナイロンとポリウレタン素材を使用し中空構造にすることで長時間使用しても耳が痛くなりにくいといった特徴がある。

 アンチウイルスマスクはスイスのリビングガード社が開発した最新のアンチウイルス技術による加工を施した生地を用いることで、新型コロナウイルスを99・9%不活性化する。ドイツの研究チームがこの技術が新型コロナウイルスに有効であることを確認している。アンチウイルス効果を保ったまま、洗濯して30回程度繰り返し使える。感染症予防において中心的な役割を担う繰り返し使用が可能な次世代型マスクとして国内での普及を図っていく。

 新型コロナの感染対策としてオーラルケアが注目され、歯ブラシの売り上げは顕著に上がっている。こうした社会の動きに対応するため、(1)歯ブラシの毛材の取り扱いがあること(2)プラスチック原料を取り扱っていること(3)社内にファッションデザイナーが常在しており、アパレル製品のモノづくりをしていること-といった3つの背景を生かした新たな試みとしてファッショナブルな歯ブラシを8月から販売している。

 また同社は模型用塗料の大手企業でもある。新型コロナによる外出自粛の影響で4月以降は休日も自宅で過ごす時間が増えた結果、模型作りを楽しむ人が増加し、昨年11月に全面リニューアルした模型用水性塗料の販売も一気に拡大した。ゴールデンウィーク前から徐々に同社への注文が増え始め、ゴールデンウィーク明けには一般ユーザーからの問い合わせが約3倍に増えた。従来からの愛好家に加え、新規参入者はその数を上回るという。色によっては生産が追い付かない状況となった。海外も同様の状況で輸出も伸びており、これを機に国内外で拡販している。また、7月には女性をターゲットにした新製品を発売した。

 鈴木商館では、各企業が「ウィズ・コロナ」を見据えた感染予防対策を取り入れていることに着目した。副資材として今年5月から非接触温度計の取り扱いを始め、6月から顧客サイドへの提案を本格化した。オフィスや工場などの入場時に、検温ニーズが増えていることを背景としている。

 検温機器は新型コロナウイルスの感染拡大で需要が高まり、一時期は一般家庭向け製品で品薄状態になる傾向もみられた。業務用では不特定多数の人間が使用することから、主に非接触タイプの検温機器の需要が増えている。無人で操作し、触れずに測定できることから感染リスク低減も期待できるためだ。

 同社の提案品は、センサー部に手首をかざすだけで約1秒で反応し、警告発信の温度設定値や音量設定などについても細かい変更が可能。オプションとして卓上用・壁掛け用の固定器具も揃えるなど、工場入り口などの設置場所に合わせて使用できる。

 シモダでは、建築向け機能性塗料などを扱うなか、室内用塗料として抗菌・抗ウイルス機能品の提案に注力している。新型コロナウイルスの感染拡大では、家庭内感染によるコロナウイルスの拡大も懸念される。一般建築塗料の市場でも同機能を持つ製品が着目されており、医療施設や教育施設、オフィス向け用途でも拡販を見込んでいる。

 提案品目は、弱い室内照明でも反応する光触媒を採用し、菌やウイルスの繁殖を抑制する機能を持つ製品。特殊吸着材で室内の臭気を吸着する消臭効果も持つ。同社ではISO14001を取得して以来「環境対応型塗料の拡販」を掲げており、環境配慮品としても提案してきた。

 中部物産貿易では、ニトリルゴム製の手袋における「需給の副作用」に注目した。医療分野でニトリルゴム製ディスポ(使い捨て)手袋の需要が増え、その影響で食品分野向け手袋で、品薄の状態が続いている。従来から電気・電子分野の組み立て作業用途などに展開してきたニトリルゴム製の指サックを、食品分野向けに代用品として提案する。

 同社では指サックを展開する化成品部に加え、外食資材部も擁している。食用添加剤のほか業務用洗剤まで含めた厨房用資材まで扱うなか、手袋・マスクといった衛生管理用製品の販売で、食品分野における手袋のタイト感に対し今春から対策を模索してきた。

 指サックを提案するに当たり、製造をグループ拠点が担う強みを生かしている。今夏には食品衛生法適合品としての認定を取得したほか、食品分野で多用される青色のグレードを揃えた。指サックで同色系は国内でも取り扱い企業が少なく、異分野向け事業部を擁する強みを生かして商機を探っている。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る