再生医療分野のベンチャー企業、バイオミメティクスシンパシーズ(東京都江東区)は14日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として有望な候補物質3つを同定したと発表した。幹細胞培養技術を活用して、ウイルスがヒトの細胞に侵入する時の足場をなくし、感染しないようにする治療メカニズムを解明。これに適合する既知の化合物として、キノロン系化合物、インスリン、HGFたんぱく質3種類を特定した。最初にヒットしたキノロン系化合物は、ロート製薬とライセンス契約を結び、治療薬応用に向けた共同開発を加速する。

 新型コロナウイルスは、ウイルスのスパイクたんぱく質がヒトの細胞表面上にある「ACE2受容体」に結合した後、たんぱく質分解酵素「TMPRSS2」がスパイクたんぱく質をウイルスから切り離すことで細胞に侵入する。バイオミメティクスは、間葉系幹細胞(MSC)の培養技術を活用した研究で、「FOXO1」という転写因子がACE2、TMPRSS2両方の遺伝子発現にかかわっていることを発見。FOXO1を阻害する化合物として、キノロン系化合物、インスリン、HGFたんぱく質を特定した。他社のコロナ治療薬はACE、TMPRSS2のどちらかを標的にしているが、両方を同時に抑制する化合物は初めてという。

 キノロン系化合物はロート製薬とライセンス契約を結んで共同開発する。過去に他の日系製薬企業が創製した化合物で、途中まで開発されたものの実用化はされていないという。経口剤、注射剤を開発した経緯があるが、気管内に直接投与できる剤形も検討する。

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