京都薬科大学の赤路健一副学長らの研究グループは、プリファードネットワーク(PFN、東京都千代田区)との共同研究で新型コロナウイルス感染症治療薬のリード化合物を発見したと発表した。PFNの人工知能(AI)技術を利用した医薬品探索研究法を開発。さらに同大で蓄積してきた重症呼吸器症候群(SARS)ウイルス増殖阻害剤のデータを元に、AI創薬手法を適用したところ、新型コロナウイルスのメインプロテアーゼ活性を阻害する化合物を7種類発見できた。短期間でリード化合物にたどり着く創薬手法として実用化を目指す。

 AI創薬は、これまでの医薬品探索研究を大きく短縮できる技術として注目されている。今回、ウイルスが増殖するのに必須であるメインプロテアーゼ活性を阻害するため、同大のSARSウイルスに対する増殖阻害剤の基礎研究成果を活用。SARSウイルスと同じコロナウイルスである新型コロナウイルスのメインプロテアーゼ活性を阻害する分子設計とモデリングをAIで実施した。

 AIが提案した分子の中から、13化合物について実際に合成し、活性阻害効果を分析した。結果、13化合物のうち、7種類が新型コロナウイルスのメインプロテアーゼ活性を阻害することを突き止めた。今回の手法はメインプロテアーゼ以外の阻害にも適用できるとしており、AI創薬の可能性を示したとしている。

 両者は今後も、AI創薬の実用化に向けた共同研究を続け、さらに精度を高めていく。今回発見したリード化合物についても、同大が中心となって創薬研究を進める予定だ。

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