慶応義塾大学をはじめとする8大学・機関は、新型コロナウイルス感染症の重症化に関わる因子を解明するプロジェクトを立ち上げた。海外に比べ、日本では死者数が少ないことに着目。日本人から収集した検体の解析を行い、特徴的な遺伝子の探索を進める。9月にも成果を公表する予定だ。得た知見は診断・治療への展開を図るとともに、新たなワクチンの開発も目指す。

 「コロナ制圧タスクフォース」と銘打ち、慶大、東京医科歯科大学、大阪大学、東京大学医科学研究所、東京工業大学、北里大学、京都大学、国立国際医療研究センターが参加する。すでにサンプルの収集を開始しており、患者の血液検体600人分の収集が目標だ。今後、広く医療機関に協力を呼びかけ、大規模化を図っていく。

 同プロジェクトでは、重症、軽症・無症候の患者のそれぞれから検体を採取。全ゲノムシーケンスなどでの包括解析を進めていく。重症化と関係する遺伝子を特定し、まず適切な診断・治療の実現に結び付ける。

 そのうえで、突き止めた遺伝子をベースに抗原候補を同定、重症化予防に適したワクチンを実用化する。経口あるいは経鼻で粘膜に投与するようなタイプを想定しており、分子ニードルという技術を活用し、開発していく考え。

 新型コロナウイルスの世界的な流行を背景に、欧米では死者が数十万人に及んでいる。一方、東アジアでは死亡率は低く、議論となっている。人種間での遺伝学的な相違が関与する可能性が大きいとの見方もあるなか、遺伝子の型を分析することで、重症化予防の鍵を見いだし、効果的なワクチンなどにつなげていくのが同プロジェクトの狙いだ。

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