新型コロナウイルスの世界的な流行が、日系エンジニアリング会社が設計・調達・建設(EPC)を遂行している海外大型プロジェクトに及ぼす影響が懸念されている。人、モノの移動が各国で制限され、資機材などのサプライチェーンや現地工事の停滞などに不安がある。各社は不可抗力宣言により納期遅れによる損失は、顧客側の負担となるとしているが、作業員の人件費負担や調達の遅れなど不透明な部分もある。また、コロナの影響が長引けば、新規案件受注への影響も避けられない。産油国の足並みの乱れも不安材料となっている。

 日揮はLNGカナダプロジェクト、千代田化工建設はエチレンプラントである米ヨセミテプロジェクトでそれぞれモジュール工法を採用している。大型プラントをいくつかのパッケージに分けて中国のヤードで製作し、工場建設地に輸送して組み立てる工法で、人件費の高い北米で建設コストを抑える効果が期待できる。

 今回、中国で春節が長引いたことにより、モジュール製作に遅れが生じた。現在は再開しており、両社とも計画通りに北米へ輸送できるよう遅れを挽回しようとしている。

 日揮は、韓国でモザンビーク向け浮体式天然ガス液化設備(FLNG)を建造中だが、現状では遅れはないという。千代田化工建設は建設工事の最終段階を迎えている米国2件のLNG案件(キャメロン、フリーポート)について、特例措置として作業継続を認められているとしている。

 東洋エンジニアリングは、インドで肥料およびLNGの再ガス化設備と2件の大型プロジェクトを遂行中だが、3月25日から3週間、全土封鎖が実施されたことにより、建設作業は止まっている。顧客から、現場作業員を減らすことを求められている案件もあり、各社とも納期遅れによる損失は顧客側の負担になるのが原則との認識で一致している。

 ただ、作業員の人件費については契約内容によっては、エンジニアリング会社の負担がないとはいい切れない。資機材は、多くの国から調達しているが、コロナに関する各国の状況が刻々と変わるだけに、実情を正確には把握し切れない面もある。

 新規案件の受注環境は大きく変わりそうだ。各社とも不採算案件の処理をほぼ終えて、20年度からは収益向上を見込んでいた。しかしコロナの影響が長引けば、エネルギーや化学分野の投資意欲が冷えることは避けられない。サウジアラビアが仕掛けた原油の価格戦争の行方も不透明だ。

 日揮は米ジョーダンコーブLNGの受注を決めており、最終投資決定待ち。千代田化工建設は、カタールのLNG拡張案件の受注を目指している。パプアニューギニアのLNGは両社とも受注に注力している案件だ。東洋エンジニアリングはインド、インドネシアなどで石化、発電などの案件に期待している。これらの案件の投資決定は、当初期待されていた時期よりも遅くなる可能性は否定できない。

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