レギュラーコーヒーを淹れると抽出かすが残る。そのまま捨てるのはもったいないという人にお勧めする使い途が脱臭剤。コーヒー会社のホームページをみると、活性炭を大幅に上回る脱臭効果が期待できるとある。多孔質構造によって臭い成分を捕捉し、分子構造によって化学的に吸着・中和する▼家庭であれば出てくる量はわずかだが、飲料メーカーなどを含め日本全体では年間100万トン程度発生している。まとまった量をどう有効活用するかが大変なようで、飼料に混ぜたりしているようだが、大半は産業廃棄物として処理されている▼コーヒー抽出かすは生理活性が高い高機能糖類のマンノースを豊富に含んでいる。そこに目をつけたのがフタムラ化学。活性炭事業で培った技術力を生かして炭素系固体酸触媒を開発、未利用バイオマス資源への適用を検討していた▼マンノースは他の糖と結びついているため抽出することが難しかった。この触媒を使って適切な条件下で加水分解を行うと選択的な分離が可能になった▼従来、マンノースの原料はコンニャクイモだが、栽培に3年もかかるうえ、抽出に強酸を使うため中和・精製のコストがかかり価格が非常に高いのが課題だった。捨てるしかなかったものを有効活用してコストダウンにつなげるのも化学の魅力といえよう。(20・7・3)

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