シスメックスは5日に開いた技術説明会で、新型コロナウイルス感染症のPCR検査薬について国産原料を用いた新試薬を実用化すると発表した。厚生労働省に製造販売承認申請を2月に提出した。同社は昨年3月に日本で最初にPCR検査薬の承認を取得したが、中国からの導入品だった。新試薬は高反応性の酵素を用い、ウイルスの検出時間を約30分短縮できるほか、変異株も検出できる。

 コロナ検査はPCR以外に抗原や抗体など検査技術が広がっているが、医療機関に遺伝子検査装置の導入が進むPCRが長期的にも定着しそうだ。シスメックはPCR検査薬に国産メーカーの原料酵素を使い、品質の高い試薬の安定供給を図る。従来品と感度は同じで、反応時間は従来の約70分から約40分に縮められる。

 併せてPCR検査装置も開発した。スマートフォン2台を縦に並べたほどの高さの小型装置で、一度に8検体ずつ検査できる。川崎重工業などと開発したロボットPCR検査システムに組み込むことで全自動で検査を行え、装置のみを単独で販売することも計画する。 説明会では、開発中のアルツハイマー病の血液検査の承認申請時期が2021年度上期と、従来計画から半年程度ずれ込むことも明らかにした。コロナ禍で臨床研究が停滞したことが影響する。

 一方でアルツハイマー病の原因たんぱく質とされるアミロイド・ベータを標的にした抗体医薬の実用化が迫り、簡易な検査技術が求められている。血液検査は既存のPET検査や髄液検査に比べて患者の負担が小さい利点もある。早期スクリーニングや治療薬選択、患者層別に役立つとみて、検査対象者は30年に世界で約18億人にのぼると試算した。

 アルツハイマー病の血液検査では質量分析技術を用いる島津製作所などとの開発競争が激しい。シスメックスはアミロイド以外のタウ、リン酸化タウ、NfLといった別の病因物質も免疫測定装置で網羅的に把握できるパネル検査システムを構築して差別化につなげる。

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