アジアを代表する国際都市国家シンガポールは、この50年で人口が3倍に増えた。今では日系企業も2000社近く進出し、在留邦人は2万6000人を数える。資源もない小国のシンガポールが生き残るには、世界から人が往来し新しいビジネスが生まれることが欠かせない。新型コロナウイルスは往来を阻む致命傷となる恐れがあるが、それを克服する策を打ち出した▼海外からの出張者が隔離されることなく会議に参加し宿泊できる施設をチャンギ空港近くに来年2月開設する。会議室は中央をガラスで完全に仕切られ、海外出張者と国内参加者が接触することがない。初期交渉はオンライン会議で行い、最終の交渉や契約・調印は対面で行いたいという要望に応えたという▼シンガポールは市中感染者ゼロの日が多くなり、年末から更なる経済・社会活動の制限緩和にも踏み切る。感染者と濃厚接触した人を追跡するアプリを義務付けるなど、感染拡大対策を講じつつコロナ後を見据えた動きを素早く進める。カラオケやナイトクラブなど感染リスクの高い店も営業再開の動きが広がりそうだ▼翻って、感染拡大第3波で揺れる日本。夜の銀座は往来が乏しく、客待ちのタクシーが空しく行列を作っている。運転手は「3時間ぶりのお客さんです」と泣きそうな笑顔で話した。(20・12・21)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る