スイス・ロシュは16日、米アテア・ファーマシューティカルズと共同開発してきた新型コロナウイルス感染症治療薬「AT―527」に関する提携関係を解消すると発表した。来年2月で終了し、すべての権利をアテアに返還する。これにともない、ロシュと契約していた中外製薬の日本での事業化権利も返還対象になる見込み。同剤は最終段階の臨床試験に進んでいるが、第2段階の臨床試験では一部の有効性を証明できなかった。

 AT―527はアテアが創製した抗ウイルス薬で、米国以外の販売権などをロシュが獲得して昨年から共同開発してきた。第3相臨床試験(P3)が各国・地域で進行中だが、来年2月10日付で両社の提携を解消し、ロシュが得たすべての権利をアテアに返還する。日本の権利は、ロシュから導入するかたちで中外製薬が持っているため返還対象になるが、同社の対応は未定としている。

 同剤はコロナウイルスの複製に必要なRNAポリメラーゼを阻害する経口治療薬。軽症患者を中心に行ったP2では、ウイルス量を減らす効果が認められなかった。対象患者や有効性の評価ポイントを変更してP3を継続する計画だが、今後はアテア単独で開発を進める。来年下期にP3結果が出る予定。日本も試験に参加している。

 同じ作用機序の治療薬では米メルクの「モルヌピラビル」の開発が先行している。同じく富士フイルム富山化学の「アビガン」もコロナ治療向けに開発中だが、米国のP2では有効性を証明できず製品化が厳しくなっている。

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