化学品商社が次世代ビジネスの育成に向けた活動を活発化している。商材を右から左に流す口銭ビジネスからの転換が言われてきたが近年、より具体的な取り組みが増え、事業の柱として育ちつつある案件も多くあるようだ。

 主な動きとして(1)自社内やグループ企業あるいは協力会社を活用した研究・開発および製造機能の確保(2)コロナ禍で現時点で停滞しながらも将来の拡大が見込まれるグローバル展開(3)国内外企業や大学など研究機関にとどまらず、ベンチャーやスタートアップ企業とのコラボレーションによる新商材の育成-などが注目される。

 なかでも期待されるテーマが他企業とのコラボレーションによる新商材の育成だ。企業として体力が脆弱で、基本的に販売ルートを持たないスタートアップ企業や大学発のベンチャー企業が商社と組む意義は大きいだろう。海外の優れた商材を広く紹介できるのも重要な機能と言えよう。商社はグローバル規模で情報網・販売網を持ち、必要なら製造委託先を国内外で探索・確保できる。一方の商社側も付加価値の高い新しい商材を開発段階から確保できるというメリットが生じる。

 扱われるテーマは多様。時節を反映してか環境やモビリティ、ライフサイエンス、エレクトロニクスなどの高機能商材が注目を集めている。

 具体例を挙げると、小西安は、がんや新型コロナウイルスなどのワクチンを研究・開発している米スタートアップ企業のVLPセラピューティクスに出資し、開発を支援している。今後、小西安は化粧品材料など医薬品以外の商材への取り組みを拡充し、海外市場の開拓にも力を注ぐ。

 また宇津商事は、アミノ酸系界面活性剤の販売を強化している。業務提携を結んだ中国の長沙普済生物科技股〓有限公司が製造している。不純物が少なく、安定性に優れ、国内メーカーと同等の品質を確保しているという。

 興和は、環境負荷軽減に貢献する生分解性高吸水性樹脂(SAP)の輸入販売を行っている。米国のベンチャー企業製で、生分解機能とともに既存のSAPとほぼ同等の吸水性能を実現した。今後、国内総代理店として販売を進める。SAPの主力用途である紙おむつなど衛生用品市場だけでなく、生分解機能を生かし、土壌改良材や食品凝固剤といった用途の開拓にも力を入れるという。

 最近の傾向として、各社とも健康や環境を意識したビジネス展開を図るケースが増えている。SDGsの観点から今後も、これらの強みを持つ企業と商社のコラボレーションが進展しそうだ。

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