【バンコク支局】タイ保健省やサイアムセメントグループ(SCG)、英アストラゼネカ(AZ)などは12日、AZが開発を進める新型コロナウイルスワクチンのタイでの供給に向けて基本合意したと発表した。バイオ医薬品を手がけるサイアム・バイオサイエンスが製造し、2021年上期に供給を開始する見込みで、全国民が接種を受けられる体制を整える。

 AZは英オックスフォード大学と新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」を共同開発している。今回、保健省、SCG、サイアム・バイオサイエンス、そしてAZが覚書を締結し、同ワクチンのタイでの製造、供給での協業に合意した。

 サイアム・バイオサイエンスは、王室財産管理局傘下のCPBエクイティーが全額出資し09年に設立した。ノンタブリ県に本社工場を構える。タイの医薬関連の研究を主導するマヒドン大学と技術提携しているほか、海外の企業から技術提供を積極的に受け入れている。17年にはキューバのがん研究機関である分子免疫学センター(CIM)と合弁会社を立ち上げるなどグローバルにネットワークを構築している。

 AZD1222の安全性や有効性が確認された後、サイアム・バイオサイエンスで製造する。タイのほか、周辺国への供給も計画している。

 タイは新型コロナ感染拡大を早期に抑え込み、市中感染はほぼゼロで推移している。しかし、外国人の入国規制で主要産業の観光業が停滞し、経済も大きな打撃を受けている。アヌティン・チャーンウィーラクーン保健相は「ワクチンの確保は景気回復の望み」とコメントしている。

 SCGはオックスフォード大学と長年協業し、19年には同大学内に「SCG・アドバンスド・マテリアルズ・ラボラトリー」を設置して高機能素材の共同開発に取り組んでいる。そのパートナーシップを生かしてタイでのAZD1222製造、供給も進める。

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