タイ大手化学の2020年1~3月期決算は、揃って減収減益となった。新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷で業績が悪化した。包装や衛生材料は堅調に推移しているが、経済停滞の長期化が懸念され先行きは不透明。新規大型プロジェクトの延期など、各社は投資計画の見直しを余儀なくされている。

 新型コロナのまん延の影響による経済活動制限や原油価格の急落で石油化学製品の市況が下落するなど苦戦。川上の石油精製から手がけるPTTグローバルケミカル(PTTGC)とIRPCは、ジェット燃料油やガソリンの需要が大幅に減ったことも響きEBITDA(金利・税・原価償却費計上前利益)と純損益で赤字を計上した。

 PTTGCの石化プラントは昨年、年間通してほぼフル稼働だったが、1~3月期の平均稼働率はエチレン設備81%、ポリマー設備89%にとどまった。

 インドラマ・ベンチャーズは、1月に米化学大手ハンツマンから酸化エチレン(EO)・酸化プロピレン(PO)事業などの買収手続きを完了し、米国にメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、リニアアルキルベンゼン(LAB)、界面活性剤を含めEO・POチェーンが加わった。売上高、利益ともにプラスに寄与したが、中核のポリエチレンテレフタレート(PET)などが振るわなかった。

 サイアムセメントグループ(SCG)も化学品の中国向け輸出が一時完全に停止するなど化学部門の低迷が響いた。

 厳しい環境のなか、目立ったのが包材の堅調さ。外出規制、商業施設・飲食店の営業停止で巣ごもり需要が増え、SCGのパッケージ部門、インドラマのPETパッケージ事業は前年同期比で増益を確保した。

 衛生材料も底堅い。インドラマの繊維部門では衣料や自動車向けが減益だったが、衛材は唯一前年同期比で増益となった。

 新型コロナの収束が見通せず、長期的に景気後退する可能性もある。各社は手元資金の確保を優先し、これまで推し進めていた投資計画や成長戦略の見直しに着手。IRPCは、パラキシレン年産能力130万トン規模の芳香族製造設備建設を25年第2四半期完工をターゲットに事業化調査(FS)していたが、検討を延長する。

 SCGは20年度投資額を期初設定から約15%引き下げ550億~650億バーツに縮小する。PTTGCは、米国オハイオ州での石油化学コンプレックス建設計画で、延期を視野に再検討している。

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