タイのサイアムセメントグループ(SCG)は、2020年度の投資計画を見直す。新型コロナウイルス感染のまん延で世界的な経済停滞が深刻化しているため、設備投資案件を厳選し、投資額を期首設定から15%程度引き下げて600億バーツ(約1980億円)程度に縮小する。緊縮策で足元の経営基盤を強固にする。

 ルンロート・ランシヨパート社長が4月末の記者会見で「新型コロナウイルスの影響で世界経済の減速懸念が強まり、新規投資は慎重にならざるを得ない」と述べ、「今年度の投資枠を700億バーツと設けていたが、550億~650億バーツ程度に抑制する」と明らかにした。

 同社の20年1~3月期決算は、売上高が前年同期比6%減の1057億バーツ(約3480億円)で大幅な落ち込みは回避した。ただ、ルンロート社長は「取り巻く環境は改善に向かっていない。通年の減収幅は拡大するだろう」との見方を示した。キャッシュフローを優先し、状況が悪化した場合は「延長できる投資計画を一旦停止するなどして投資額をさらに下方修正する」考え。

 緊縮を進める一方、「M&A(合併・買収)のための資金は十分に確保している」と強調。高付加価値製品の拡充やサプライチェーンの強化につながる案件に取り組む方針。

 SCGはベトナム南部ロンソンで石化コンビナートを建設中で「現時点の工事進捗率は33~34%」。総投資額は約54億米ドル(約5900億円)で経営資源を集中的に投じている。

 しかし、世界的にリサイクル促進をはじめ循環型経済などの潮流が強まり、成長戦略をロンソンプロジェクト一本足からシフトし、パッケージングや新規事業創出にも重点を置いている。

 新型コロナ感染拡大の影響で中小企業やスタートアップ企業が経営難に陥るとM&Aの機会が増えるため、SCGも動向を注視しているもよう。厳しい環境のなかで緊縮と成長の両輪で事業ポートフォリオを最適化する。(岩﨑淳一)

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