近年、外部人材の幹部登用を積極化するダイセル。化学メーカーOBや元経済産業省キャリアの登用などに続き、7月には長期エンゲージメント(対話型)投資会社であるみさき投資より、マネージングディレクターの斉藤剛氏を顧問に迎えた。同氏はかねて小河社長をはじめダイセル経営陣と意見交換を重ね、様々な経営課題について助言を行ってきたが、ダイセルからより経営に近い立場での参画を要請され、今回の就任となった。気候変動や健康・食料問題など各国の個別政策だけでは解決できない地球規模の課題が頻出するなか、同氏は「社会課題を解決するには、資本主義メカニズムを最大限活用する必要性」を強調。個社の枠を超えた「課題解決型の産業エコシステム」の形成を思い描く。コンサルティング業界などで幅広く産業を分析し、企業への助言を行ってきた同氏の目には、日本の化学産業はどのような姿に映るのか。産業史の視点も交え、業界が立つ現在位置とこれから描くべき将来像について聞いた。(聞き手:兼子卓士)

◆…現状の製造業が置かれたステージ感は。

 「BtoBの産業構造の多くは電力・交通・通信など社会インフラの整備によって形成されてきた。急ピッチでのインフラ整備ニーズを、異種企業の密な連携によって創り出したのが『垂直統合・すり合わせ』型の産業構造である。だが日本を含む先進国の必須の社会インフラが整備されると、この垂直型は大きな転換期を迎えた」

 「産業の成熟化により、コモディティニーズ(普及品を安く)とスペシャリティニーズ(ニッチな領域での特異な要求)の二極化が起きてくる。さらに2010年代以降は「デジタル化」の波が加わり、産業構造の変容への強い圧がかかっている」

◆…金融市場が製造業を見る視線は。続きは本紙で

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