ものごとにはチャンスというかタイミングというものがあって、それを逃すと後悔することが多々ある。すっかり葉桜に変わってしまった公園のソメイヨシノを見上げ、そんなことを実感する時期でもある▼あの有名なチャンスの神様の話は、高校時代に英語の教師から初めて聞いた。チャンスの神様には前髪しかない。通り過ぎたらもう掴めないよと。一方で、その先生はこんな話もしてくれた。人生、30歳までは自分のやりたいことをしてもいい。30歳ならまだやり直せる。しかしそのときはチャンスの神様を見逃すな、と。定年近い人生の先輩から卒業間際の生徒へ贈る言葉として、今も心に刻まれている▼若手ではあるが30歳は過ぎた社員。なんと医学部に合格したので会社を退職するという。順調にいっても晴れて医者になるのは40歳前後というから、まさにラストチャンスだろうか。会社の近くにアパートを借り、通勤時間を削って受験勉強に励みながら、見事に前髪を掴んだ▼昨年はコロナ禍で中止や延期が相次いだ各種のスポーツイベント。今年は何とか開催されそうだ。夏にはオリンピック・パラリンピックも控えている。選手達はどんな想いで臨むのか。まだ満開の八重桜を眺めながら、チャンスを掴むため研鑽を重ねてきたアスリート達に思いを馳せる。(21・4・6)

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