ナカライテスクと京都大学発バイオベンチャーの幹細胞&デバイス研究所(SCAD、京都市)は15日、戦略的業務提携を結んだと発表した。ヒト生体の機能を模倣する細胞デバイスと、細胞デバイスに関連する試薬や機器・機材などの開発・製造・販売で共同する。ナカライテスクはSCADへの出資も行った。同デバイスは、新薬候補の有効性や毒性を効率良く評価する手法として、医薬品をはじめ農薬、化粧品などの業界で注目されている。両社の強みを融合し、病態を再現した疾患モデル細胞など複数の事業計画を立ち上げていく。

 ナカライテスクが保有する試薬・培地などの開発・製造の機能と販売網を生かし、SCADが研究開発を進める高機能性の細胞デバイスの応用展開を進めていく。細胞培養向けの新たな培地や添加物などの共同開発、新たな疾患モデル細胞やこれを使用する創薬評価系の開発の共同受注、評価系開発後の創薬探索で用いる化合物ライブラリーの調達をナカライテスクが支援するといったことを想定し、協議していく。

 SCADは、京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)で取り組まれてきた研究の成果を実用化することを目的として2014年5月に設立。19年には、国家戦略特区の認定事業者として、ヒト血液を原料としたiPS細胞(人工多能性幹細胞)から病態を再現した疾患モデル細胞などを作成して、創薬探索などに事業応用することが認められた。iPS細胞由来の心筋細胞や神経細胞などの培養細胞を利用した独自の細胞デバイスの開発に注力している。

 コア技術は、低分子化合物を使ってiPS細胞などから心筋細胞など各種細胞に分化誘導する技術、独自のナノファイバー上で各種細胞を培養し3次元多層構造の組織片デバイスを作り出す技術、筋収縮や神経の電気活動に関する評価技術など。現在、京都府立医科大学とともに、有効な治療法が確立されていない遺伝性の末梢神経疾患であるシャルコー・マリー・トゥース病の治療法開発につながる研究などに取り組んでいる。

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