半導体産業の30年にも及ぶ低迷から脱するには企業の活力が欠かせない。米シリコンバレーのようにスタートアップとベンチャーキャピタルの柔軟な組み合わせがモデルになるが、日本では十分なインフラが整っておらず、「ユニコーン」も生まれにくい。しかし新たな成長の芽はしっかりと芽吹いている。タムラ製作所からスピンオフしたノベルクリスタルテクノロジー(埼玉県狭山市、倉又朗人社長)は、独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)からの技術移転を受けて日本発の酸化ガリウム(Ga2O3)デバイスの普及を目指している。「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の性能をシリコン並みの価格で出せれば市場が変わる」と、価格性能比の高さを差別化の柱に置き、結晶とエピタキシャルウエハー、デバイスの3本立てで事業を拡大中である。まずはダイオードの普及に努めて橋頭堡を築き、トランジスタを製品化した後、酸化ガリウムパワー半導体のフルモジュール化を目指す。クリーンルームを増設するなど生産能力の増強と同時に、デバイスの信頼性を高める技術開発に取り組んでいる。

- なぜ酸化ガリウムに着目したのですか。

 「もともとはタムラでLED(発光ダイオード)の透明導電性材料として酸化ガリウムを扱っていた。ある時、パワー半導体にも使おうというアイデアが生まれ、それを事業化するため本体から切り出し、別会社にした。当社設立(2015年)まではタムラが基板、東京農工大学がエピタキシャル、NICTがデバイス開発を分担。11年から手がけ、もう10年になる。酸化ガリウムの大きなバンドギャップ(伝導帯と価電子帯のエネルギー差)をパワーデバイスに活用するのは、世界でも例がなかった」

<圧倒的コスパ訴求>

- 今はどのような開発段階にありますか。続きは本紙で

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