化学や機械などの専門商社がバイオマスエネルギーに対する取り組みを強化している。原燃料の国内外からの調達や製造装置の販売、発電所建設への参画などビジネススタイルはさまざま。バイオマスエネルギーの普及進展にともない、商社機能を生かした取り組みが本格化することが見込まれる。
 矢野経済研究所の調査によると、2021年度の国内におけるバイオマスエネルギーの市場規模は、現在計画中や工事中のバイオマス発電所が今後稼働すると6160億円になると予測している。12年に再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)が始まり、急激に拡大したバイオマス発電がバイオマスエネルギーの市場規模を押し上げているとしている。
 同調査で課題に挙げているのが原燃料の調達。木質バイオマス発電所の増加にともない、原燃料の需給がひっ迫する地域が出ていると指摘している。このような地域では原燃料の不足や価格の上昇が懸念され、バイオマス発電所の安定稼働や収益性のリスク要因となる。このためバイオマス発電事業者では、原燃料の収集ネットワークの拡充や未利用資源の探索と活用、林業支援、森林育成などに取り組む例がみられるという。
 バイオマスエネルギーはエネルギー源の低炭素化や未利用資源の有効利用、地域産業の振興などに寄与するエネルギーであるため、ニーズは根強くあるとも示唆している。バイオマスエネルギーの本格的な普及には、いくつか課題があるが、それらを解消するための取り組みをビジネスチャンスととらえる専門商社も少なくなく今後、その活動が活発化する見通しだ。
 例えば化学品商社の三洋貿易は現在、木質バイオマス発電の関連機材の販売に力を入れている。機器販売から設計・施工まで手がけており、累計受注実績70基以上を目指している。また野村事務所は、バイオマス関連事業でバイオマス発電向けPKS(パームヤシ殻)の輸入をスタートした。今後は東南アジア地域でPKS以外のバイオマスの確保にも努める。鈴与商事は静岡県で計画中の「御前崎バイオマス発電所」について事業主体の「合同会社御前崎港バイオマスエナジー」に出資する。同プロジェクトでは静岡県御前崎市および牧之原市への設備建設が予定され、23年7月の運転開始を見込んでいる。
 一方、機械商社の第一実業はバイオマス燃料事業で環境エネルギーなど3社と連携し、飲料メーカーからのコーヒー抽出かすなどを使って製造した固形燃料を販売するビジネスを進める考えを明らかにしている。

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