4年ごとに行われる米国の大統領選。共和党で現職のドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領の戦いに世界が注目している。投開票日は11月最初の月曜日の翌日と決まっており、3日には次期大統領が決定する。結果次第で米国のエネルギー政策が大きく変わる可能性が出てきた。
 トランプ大統領は2017年に就任すると、オバマ前政権が進めてきた石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料規制を緩和するとともに、原油パイプラインの建設計画を推進し、エネルギー分野の雇用創出や輸出促進を重視する姿勢を打ち出した。昨年は、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明した。離脱が有効になるのは国連に正式通告した1年後、つまり大統領選挙翌日の11月4日だ。
 選挙の行方は不透明だが、もしバイデン新大統領が誕生すると、エネルギー政策は大きく転換することになる。バイデン氏は、新型コロナウイルス感染拡大により、米国が大恐慌以来最悪の経済危機にあるとし、雇用や産業の再生を強く訴え、製造業の支援に7000億米ドルを投入し、500万人の雇用を創出するとしている。
 環境政策では、パリ協定への即時復帰に加え、5年間に5億枚の太陽光パネル設置を公約に掲げている。そして環境インフラ分野に4年間で2兆米ドルの資金を投じる計画で、電池技術や人工知能、バイオ技術、クリーンエネルギーなどの新興産業の研究・開発に3000億米ドルを投資する考えを示している。
 取材した米国のベンチャーもバイデン新政権に期待する企業の一つ。「バイデン氏はクリーンテックインフラ、すなわち電動化に向けた投資に力を入れる方針を打ち出しており今後、トレンドが大きく変わる」と予想する。
 電動化が進むことで米国市場が大きく拡大することが見込まれるが、その効果は米国企業にとどまらない。このベンチャーは製品に使用する材料の一部を日本から調達するほか、日本企業と共同で事業展開を目指している。「日本の側からみても今後、米国のクリーンテック市場は面白くなる」と見通す。
 足元の需要は厳しいが、自動車業界はCASE実現に向けた大きな転換期にある。EV(電気自動車)の普及拡大は政策としても分かりやすく、充電スタンドの整備や車両コスト削減を目指したイニシアチブなどの取り組みを通じ、さらなる電動化の加速も考えられる。日本の企業も今から米国のエネルギー政策転換を見定め、新たな商機をつかんでほしい。

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