通勤や買い物に出かける際、最寄りのJRの駅までバスを使う。ここ数年、乗客の高齢者の構成比率が明らかに上昇しているのが分かる。坂道が多いためか短い区間の利用者が少なくない。高齢運転者の交通事故がニュースで度々取り上げられ、車の運転を控えるようになった人もいるだろう▼運転免許の自主返納制度が導入されたのは1998年(平成10年)のことで、その年は2596件だった。それ以降、増え続けて19年時点で60万件。そのうち75歳未満が約25万件と前年に比べて2倍近く増えた▼それでも70歳以上の運転免許保有者は約1200万人と全体の14%を占める。都市部では交通網が整備されているから代替手段がそれなりにあるものの、過疎地では生活の足である車を手放すことは容易ではない▼自主返納が難しいのであれば自動ブレーキなどを搭載した「安全運転サポート車(サポカー)」という選択肢がある。昨年、普及に向けて補助金制度が導入されたほか、22年からはサポカーの限定免許制度が始まる予定▼自動運転車が実用化され一般の人の手に入りやすくなるのはまだ先のこと。利用者が減少傾向にあるとはいえ、公共交通機関の果たす役割が見直されるべきだろう。たとえ乗り降りに時間がかかっても暖かく見守っていたい。明日は我が身と思いながら。(21・2・26)

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