今年の秋の彼岸は週末の19日から25日。21日は敬老の日、22日は秋分の日なので多くの人が4連休となる。9月は4月始まりの年度の上半期が終わる月で、しかも月末とあれば忙しさも募り、連休を素直に喜べない人もいるだろう▼さて、秋彼岸のころ咲くことからそう呼ばれるヒガンバナ。曼珠沙華という異称もあるこの花は、その姿形が放つ異彩もさることながら、不思議な生態の花でもある。調べてみると、花は咲いても実はならず繁殖はもっぱら地下茎によっているので、虫に受粉作用を助けてもらう必要はないらしい。ならばなにゆえにあの立派な花を咲かせ蜜を用意してアゲハチョウたちの訪れを誘うのか▼面白い見方がある。棲み分け理論など独自の進化論を唱えた今西錦司元京大教授は「曼珠沙華」というエッセイの中でおよそ次のように述べている。「自然は我利我利亡者の寄り集りではない。ヒガンバナの花蜜はその持ち主のためには役に立たなくても、訪ねてきたチョウのために役に立っていればよいのだ。美しい自然は我利我利亡者だけの集まりでは形成し得ない」▼これについて今西さんは「ダーウィン流の進化論者なら首をひねるかもしれない」と語っているが、それは新自由主義の道をひた走る現代人に向けられた寸鉄と言えるかもしれない。(20・9・16)

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