微生物・感染症検査機器大手の仏ビオメリューは、日本で感染症の原因病原体の流行動向をウェブで公開する取り組みを始める。コロナ禍を機に医療機関などに330台超が普及した多項目遺伝子検査装置から検査結果を収集しており、日本全体のほか、特定の地域の流行トレンドをリアルタイムに把握できるようになる。新興感染症のほか、社会問題となっている薬剤耐性(AMR)への対策強化が急務のなか、臨床現場を支援する疫学ツールとして役立ててもらう。

 同社の遺伝子解析装置「フィルムアレイ」は呼吸器や肺炎、消化管、敗血症などの血液培養、髄膜炎・脳炎のそれぞれの疾患の原因菌・ウイルスの遺伝子や薬剤耐性遺伝子を網羅的に解析できる。2020年に呼吸器パネルに新型コロナウイルスの検査項目を追加したことを皮切りに、医療機関や検査施設への導入が広がり、現在は全国に330台以上が稼働している。

 日本法人のビオメリュー・ジャパン(東京都港区)は装置の導入先と契約を結んだうえで検査結果を収集し、日本のほか地域ごとにどの病原菌・ウイルスが流行しているかをグラフで把握できるようにする。例えば、呼吸器感染症ではインフルエンザA型やB型、RSウイルス、新型コロナなどの流行状況を時系列で確認できる。

 仏ビオメリューは感染症の診断機器世界大手で、日本では病原体の同定に用いる血液培養、遺伝子解析、質量分析の各検査装置や抗菌薬の感受性試験の装置などをフルラインアップでそろえている。同社は元来AMR対策に力を注いでおり、「コロナだけでは終わらせない」(ビオメリュー・ジャパン担当者)と、コロナで広がったネットワークを利用して事業強化に取り組む。

 50年にAMRによる死亡者は1000万人を上回り、現在のがんを超える。診断検査は抗菌薬適正使用支援には欠かせない技術で、感染症流行動向の疫学ツールも含めて臨床現場を支援する取り組みを充実させる。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

セミナーイベント情報はこちら

ライフイノベーションの最新記事もっと見る