新型コロナウイルスの変異株に対するワクチン開発が始まった。南アフリカを中心に広がっている変異株は、既存のワクチンが効かない可能性が指摘され、各社が追加接種や改良ワクチンの開発に着手。米ファイザーと独ビオンテックは、まずは既存ワクチンを追加接種する臨床試験を行う。米モデルナは、改良ワクチンなど3種類を検討し、今年下期にも実用化する。

 ファイザーとビオンテックは、まずは既存ワクチンを追加接種する方法で変異株に対応する。昨年の第1相臨床試験(P1)に参加した米国の被験者144例を登録し、同じワクチンの3回目接種を行う。南ア型変異に特化して再設計した改良ワクチンも開発しており、欧米などの薬事当局と治験実施に向けた協議を始めた。ウイルス株のみ毎年更新する季節性インフルエンザワクチンと同様の開発要件を求めている。

 モデルナも、追加接種するワクチンを開発する。(1)南ア型に特化した改良ワクチン(2)既存ワクチンの追加接種(3)南ア型と既存型を組み合わせた混合ワクチン-の3種類を検討する。各ワクチンの治験薬がこのほど完成し、治験を行う米国立衛生研究所(NIH)に出荷した。モデルナ自身も治験を実施する。免疫原性と安全性が確認できれば、追加接種ワクチンとして緊急使用許可を申請し、今年下期以降の供給開始を目指す。

 ファイザー・ビオンテック製、モデルナ製ともメッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用したワクチンであるため、変異株の遺伝子情報が分かれば数週間以内に改良ワクチンを設計できる。ウイルス抗原のデータのみが変更されるのであれば、欧米当局は予防効果を検証する大規模な臨床試験は求めない方針。変異株に対する中和活性と安全性が小規模治験で確認できれば申請に持ち込める見込みだ。

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