中国政府が生態環境保護や省エネの観点からプラスチック汚染対策に本腰を入れている。地方政府も、これに呼応して使い捨てプラ製品の使用制限などに動き出した。単純な使い捨ての抑制は推進すべきだが、中国のプラ汚染対策の現場では「脱プラ」「プラスチックは害悪」といった声も見聞きする。適切な情報や知見を発信するのも、隣国である日本の役割だ。
 中国では7月、国家発展改革委員会など政府9部門が連名で全国レベルのプラ汚染対策の強化・徹底を通知した。樹脂製品の削減に向けて各地における生産や使用状況を厳しく監視する方針で、国主導で対策を徹底する意思を内外に示した。 
 各地でもプラ汚染対策に関する行動計画の策定が進む。上海市は、2020年までにショッピングモールやスーパーなどでプラ製の買い物袋の提供を禁止し、23年末までに市内すべてのホテルで使い捨てプラ用品を積極的に提供しないよう求める。広東省も、20年末までに省内の飲食産業で使い捨てのプラ製ストローなどの使用を禁ずるなどの措置を講じる。分解可能な樹脂原料の生産能力も大幅に向上させるとしている。
 中央政府は今年1月に「プラスチック汚染防止強化に関する意見」を策定した。25年までにプラ製品の生産や流通、消費、回収、廃棄の基本的な管理システムを確立し、主要都市で埋め立てるプラスチック廃棄物の量を大幅に削減することなどを目標に掲げた。来期からの次期5カ年計画も想定した生態環境保護の取り組みの一環だ。
 関連産業を束ねる中国石油・化学工業連合会(CPCIF)も取り組みを強化。今年6月に国際アライアンス「AEPW」とパートナーシップを組んだ。知見やノウハウを共有し、CPCIF加盟各社への情報提供などを行う。CPCIFは海洋プラ問題で18年秋、日本プラスチック工業連盟とも技術協力や情報共有に関し連携を確認した。海外機関の知見も取り込むことで対策を前に進めたい考えで、日本への期待も大きい。
 政府の指示で迅速に対応するのは中国の良いところだが、取り組みのなかで「脱プラ」といった言葉が強調されるのは気掛かりだ。万能のように語られる生分解性樹脂も、用途や使用後の回収まで総合的に考える必要があろう。汚染対策は、削減目標の設定だけでなく、自動車の軽量化や食品の長期保存など、プラスチックの有用性の啓蒙活動と一体でなければならない。日本は、化学産業のパートナーとして適切な情報発信によって汚染防止に貢献しつつ、中国での商機獲得にもつなげたい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る