アジアのプロピレン市況は、ナフサと堅調な値差を維持している。新型コロナウイルスの感染拡大が需給両面に影響を与え、スプレッドは1トン当たり350~450ドルと、オレフィンのなかでは堅調さが目立つ。供給は製油所の流動接触分解装置(FCC)の稼働低下で減少しているのに対し、需要は主力誘導品のポリプロピレン(PP)で不織布マスクや食品包材向けの需要が集中した。誘導品需要の本格回復には懐疑的な見方が多いが、一定の値差を確保したまま推移するとみられる。

 4月上旬に550ドル弱だったプロピレン市況は中旬までに700ドルまで上昇。この間のナフサ市況は190~200ドルでスプレッドは一時500ドルまで拡大した。ナフサに大きな変動がないため、誘導品の需要が影響したかたち。とくにPPの急騰に連動したとみられる。

 アジアのPP市況は4月初めの約680ドルから中旬までに900ドル弱まで急騰。5000万トンとみられるアジアの年間需要のうち半分以上を消費する中国の国内市況は、大連商品取引所の先物(5月限月)が8000元強と同期間で10%程度上昇した。新型コロナウイルスの感染拡大によって高まった食品包材向け、不織布マスク用など医療向けの需要が牽引した。

 供給も不足感が先行したもよう。ナフサクラッカーの定修要因だけでなく、域内供給の2割程度を占めるとみられるFCCの稼働が下がっている。原油需要の低迷による製油所の稼働低下が影響している。

 足元はPPのアジア市況が800ドル強、中国国内市況が7000元強まで下がった。プロピレンも中旬までの上げ幅を削り620ドルまで下がった。急伸の反動に加え「中国の製造業の活動が高まっておらず実需の回復は確認できない」(商社筋)ことが要因。

 PP以外の誘導品も含めると需要回復の展望は不透明で「不安定な値動きが続く」との声がある。ただ、ナフサとの値差が200ドル前後のエチレン、ブタジエンと比較してプロピレンは倍近くで推移しており、クラッカーの収益性に対する貢献度が高いため「縮小すると減産による調整が入る」とみる関係者も多い。

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