ある会社へ取材に行った。以前は大勢の従業員や来客が行き交っていたロビーは閑散とし、受付にぽつんと佇む女性と警備員の2人以外に誰もいない。聞くと、先週から再び原則テレワークに戻ったという▼その会社の会長はコロナをヘビに例える。危機感を失い、現状に満足する日本の社会が変わるには、ヘビのような外圧が不可欠というのが持論。テレワークが長時間満員の「痛勤」を解放し、進化するAIやロボットが定型の仕事を効率よくこなすため、人間はより知的創造性のある仕事に専念できる。むしろ創造性を磨かなければ生き残れない。コロナはそんな社会への変革の起爆剤となる可能性がある▼最近よくテレビで見かけるのが「がんばるな◯◯」というCM。企業はテレワークなど多様な働き方を広げるべきというのが主旨だが、キャッチコピーとしては真逆の、危機感を失わせるように感じる▼キャッチコピーといえば、日本初とされるのが「土用の丑の日」。今年は2回あり、先週と今週末にもやって来る。夏に売れ行きが伸び悩む鰻屋の相談を受けた平賀源内が、夏バテ防止になるとして考案。店は大繁盛したという。マイナスをプラスに変える好例だ▼国は「Go To」で迷走している場合ではない。ヘビがチャンスに変わる良いキャッチコピーはないものか。(20・7・27)

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