アメリカのボストン。ハーバード大学やMIT大のことなどが思い浮かぶ。どちらの大学も正確に言うとチャールズ川を挟んだ隣市のケンブリッジ市に所在するが、ボストン大都市圏(地域)ということで「ボストン」で話を進める▼「オリバー」と「ジェニー」という名前もいまだに思い出す。雪景色が印象的な数々の名シーンと主題曲の切ないメロディーとともに。映画『ある愛の詩』である。ボストンという都市が強く印象に刻まれたのはこの映画でだった▼もちろん、ボストンはそのような郷愁だけで語られる街ではないことを、知る人はよく知っている。弊紙の北米特集(20日付)でもこの街がフィーチャーされている。世界の優れた頭脳が集まる知の一大拠点であり、「スタートアップの街」「創薬の街」としてその存在感は圧倒的だ▼日本国内の2018年度ベンチャーキャピタル(VC)投資が2706億円なのに対し、ボストン地域の18年VC投資は102億ドル(約1兆1000億円)。この投資を牽引しているのがライフサイエンスを中心としたヘルスケア分野であり、全体の約6割を占める▼武田薬品など日本の製薬企業の活動も活発化しているという。シリコンバレーがどうしても注目されがちだが、ボストンからも目を離せない。アメリカの“強さ”がここにある。(20・1・29)

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