創薬ベンチャーのボナック(福岡県久留米市)は18日、新型コロナウイルスに対する核酸医薬の実用化に取り組むと発表した。すでに治療候補薬の合成を実現しており、2022年の治験入りを目指す。ウイルス特有の遺伝子に核酸を結合させて増殖を防ぐ作用がある。新型コロナだけでなく、新興ウイルスに応じて核酸配列を変えれば、最短半年で治験に持ち込める技術を確立する。 

 ボナックは生体で分解されにくい核酸を創製する独自技術を持つ。米国で治験をしている特発性肺線維症の核酸医薬のノウハウを新型コロナ薬開発に応用する。吸入薬のため、肺に直接作用できる利点がある。原薬の製造は提携先の住友化学に委託する方向。治験に向けて製薬会社とも交渉中だ。

 コロナウイルスは遺伝情報を持つが自ら増殖できないRNA(リボ核酸)をたん白質の殻で覆った構造をしている。人の細胞に侵入してRNAを複製し増殖する。ボナックの核酸医薬はこのRNAの一部の領域に結合して増殖を阻止する。新型コロナの遺伝子配列をもとにすでに約50種類の候補薬を設計し合成した。

 より詳しく薬効を確かめるため、ウイルス取り扱いの高度管理施設を持つ福岡県保健環境研究所(同太宰府市)と共同研究を行う。今月から新型コロナウイルス株を使って候補薬を絞り込む。人道的見地から未承認薬を患者に投与する拡大治験の制度も活用し、22年以降の承認申請を目指す。

 新型コロナ薬で核酸医薬のメカニズムを立証できれば、新興ウイルスにも応用できる。公的研究機関などが公表する遺伝子配列をもとに候補薬を設計し、最短半年で治験に入れ、1年で最終治験に進める。他の医薬品技術やワクチンに比べて短期間に治療薬を実用化できる可能性がある。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

HP独自・先行の最新記事もっと見る