バイオベンチャーのボナック(福岡県久留米市)は、新型コロナウイルス感染症に対する核酸医薬品の治験を始める。日本医療研究開発機構(AMED)から3年半で50億円の支援を受けることが決まり、感染症研究で有名な長崎大学熱帯医学研究所などの協力を得て開発する。2022年度に治験を開始し、25年度の承認申請をめざす。

 ボナックが開発する核酸医薬は、新型コロナウイルスのヌクレオカプシドたんぱく質を標的にしている。ヒトの細胞内でウイルスの遺伝子に結合して分解し、複製を防ぐ。ウイルスを構成するたんぱく質の合成も阻止する。ウイルス株を使った試験管内の実験で候補薬を絞り込み、1月に実施したフランスでの有効性確認試験で明確な効果が認められた。

 患部の肺に直接作用しやすい吸入薬として開発する。薬効成分が血管を介して全身をめぐらないため、副作用が少ない利点もある。米国で治験をしている特発性肺線維症の核酸医薬も吸入薬で、ノウハウをそのまま活用できるため早期の実用化を見込める。

 AMED事業として実用化を目指し、東京医科大学や福岡県保健環境研究所も参画する。5月から薬物動態などを確認する非臨床試験を始める。肺炎への進展や味覚・嗅覚などの臨床症状、変異株への薬効を評価したうえで来年度にヒトに投与する第1相臨床試験(治験)に進める。第2相まで行い、承認申請する計画で、条件付き早期承認制度の活用を想定する。

 ボナックは治療対象として新型コロナの「軽症」、呼吸不全のない「中等症Ⅰ」を見込む。AMEDから支援を受ける50億円には、非臨床試験や治験に使う原薬などの費用を含む。原薬の製造は住友化学と連携する方向。

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