230年前のきょう、イギリスで化学・物理学者マイケル・ファラデーが生まれた。彼は75年の生涯にノーベル賞級の業績を5~6個は成し遂げたと言われる。アインシュタインがファラデーの肖像を自分の部屋に貼っていたという逸話もある▼彼の『ロウソクの科学』を読んでサイエンスに目覚めた人は多い。吉野彰さんをはじめノーベル賞級の学者の回顧録にもこの本の名前はよく出てくる▼弊社運営ウェブサイト「うちラボ」に、理科教育や科学教育が専門の左巻健男さんのインタビューが掲載されているが、左巻さんもファラデーの大ファンだと言い、こう語っている▼「当時は、化学の研究はお金に不自由しないひとが趣味でやっていることが多かった。かれのように貧しく生まれて、化学者になった人はなかなかいない。学校でちゃんと教育を受けていないから数学ができない。だけど、すごい洞察力で、自然界を頭の中にぱっと数式なしにイメージできたようだ」▼貧しい鍛冶屋の家庭に生まれ、14歳からは製本職人として年季奉公に入る。製本の仕事をしながら、本の中身も読むようになり、とくに科学に興味をもち、わずかな小遣いを工面して実験もしたという▼どんな環境でも勉強はできる、と説教するよりも、ファラデーの伝記を読ませるのが一番かも知れない。(21・9・22)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る