素材・材料は我が国産業の要であり、数々のイノベーションを引き起こしてきた。この力「マテリアル革新力」は、ソサイエティ5・0の実現、社会の脱炭素化や循環型経済を実現する上でも不可欠な存在だが、熾烈な国際競争の中で、その強みが低下していると指摘する声もある。こうした状況を受け、政府はマテリアル分野を再び「戦略的に取り組むべき基盤技術」と位置づけ、15年ぶりとなる政府戦略の策定に向けた議論が「マテリアル戦略 有識者会議」において進められている。座長を務める花王の澤田道隆会長、日本製鉄の小野山修平副社長、JX金属の菅原静郎取締役常務執行役員、旭化成の山岸秀之常務執行役員、物質・材料研究機構の橋本和仁理事長、産業技術総合研究所の村山宣光理事、大阪大学の関谷毅教授、東京工業大学の一杉太郎教授に、それぞれの立場から日本が進むべき道について聞いた。(随時掲載)

 ◆…政府戦略策定は2006年以来。なぜ今マテリアル革新力の強化が必要なのか。

 「脱炭素、プラスチックごみ問題、感染症問題など世の中が大きく変わっているなか成長戦略を語るには、ESG(環境・社会・企業統治)イノベーション、すなわちマテリアル革新力が必要と考える。06年もESGやSDGs(持続可能な開発目標)のような視点はあったが、今は本気で取り組まないといけない時代だ。ESGイノベーションは製品設計の段階から環境負荷低減などを織り込み、社会課題の解決とビジネスを両立させるもの。地球規模の課題に個社でできることに限界はあるものの、ESGという意識が横串で入ることで分野横断的な連携・協調もしやすくなる。これはマテリアル産業にとっても活性化につながるだろう」

 「ESGイノベーションの骨格はマテリアルのウェイトが高いと思っている。例えばプラごみ問題を捉えるにしても素材を深く知らないと大規模なリサイクルなどはできない。そのためには材料を深く知り、それを新たなイノベーションで変えていく。脱炭素に関してもマテリアル関係なく減らせる部分はあるが、今後は二酸化炭素(CO2)を処理するカーボンリサイクルが重要になる。材料の本質を理解しなければ難しい」

 ◆…マテリアル産業の国際競争力を高めるにもESGは重要か。続きは本紙で

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